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象の消滅

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

「象の消滅」短篇選集 1980-1991 村上 春樹

恥ずかしながら、私が村上 春樹を読み出したのは、ここ2~3年のことである。

“恥ずかしながら”と書いたのは、知人に聞くと彼らはみな一様に、村上 春樹は若い頃に読んだと口を揃えて言うからなのだが、そしてその殆どが「ノルウェイの森」だという。”
確かに私も若い頃に、彼の作品を読んでいれば今と印象はずいぶん変わっていただろうが、若い頃、斜に構えていた私は素直に作品世界に入っていけなかったかもしれない。

まぁ、この歳になって彼の作品を読み始めたのも何かの縁というものだろう。

私は彼の長編、短編小説、エッセイの中では長編小説がいちばん好きだ。(ちなみに苦手なのはエッセイ。)短編小説は長編小説を書くための下書きを読まされているようで、どうも気持ちよくない。
私は彼の小説にストーリーとしての面白さを求めてはいない。文体とその語り口に引き込まれて先に読み進むといった感じだ、“それが証拠に、人に聞かれても今まで読んだ長編小説のストーリーは全く説明できない。”それでも、どうも短編は作品世界のイメージがわかない。

と、いいつつ今回紹介するのは短編集である。
なぜなら、この本が一番最近に読んだ本だからで、以前読んだ本はその物語をひとつも説明できないから・・・。

この本はニューヨークで出版された村上 春樹の短編集をそのままそっくり日本で再版したものということだが、なかなかバラエティーに富んだ品揃えで、いろんなハルキ・ワールドが楽しめる。

この本の中で私が気に入っているのは、

◆ドイツ土産に父からレーダーホーゼンを頼まれたために、離婚してしまった母のことを娘が語る 「レーダーホーゼン」

◆友人の恋人が“納屋を焼く”という行為を告白する、自分には決して理解できない人間の心理がある 「納屋を焼く」


◆妹の恋人にしっくりくる感情が持てない兄の心理を描く 「ファミリー・アフェア」

◆これまで、出会った3人の中国人の想い出。
 個人的には2人目の大学生の頃に知り合った女の子とのエピソードが好きな 「中国行きのスロウ・ボート」

◆アルバイトの芝刈りで出会った不思議な女性を通じて、別れた彼女との心理を別の角度からみることととなった 「午後の最後の芝生」

◆町で飼育されていた象が突然消滅してしまい、そのことに答えにならない原因を感じている 「象の消滅」

といったところか?
やはり、物語を説明するとどうもしっくりこない?

どれも捕らえどころのない作品ばかりだが、おそらく村上 春樹の短編が好きな人は、この一見無責任に放り出されてしまうような作品の、外枠を自分のイマジネーションで埋めていくのが楽しいのだろう。

そんなふうに私は感じている。

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